横浜における気象条件と紫外線

2009年・2010年・2011年の比較

 

2013年3月
気象学研究室  土肥桃子


背景・目的

本学は有害紫外線モニタリングネットワークの横浜観測サイトとして、1999年3月から現在に至るまで、紫外線および日射量の観測を行なっている。(図1)
本研究では気象条件(雲・気温)と紫外線の関係について明らかにすること、 また、MSデータとSORA-Oデータを比較することを目的としている。

図1 有害紫外線モニタリングネットワーク参加サイト



観測概要

場所... 横浜国立大学 教育人間科学部 第2研究棟屋上(図2)

図2 設置状況


計器... A領域紫外日射計 MS-212A 英弘精機(図3)
B領域紫外日射計 MS-210W 英弘精機(図4)
全天日射計 MS-802 英弘精機(図5)

 図3 A領域紫外日射計   図4 B領域紫外日射計 図5 全天日射計 


解析結果

1. 雲と紫外線の関係

使用したデータ   2010年1月1日〜12月31日  0:00〜23:59の月平均値

雲の影響がある時と無い時(快晴の日)を比較した(図6)。
本解析では、1日の日照時間が5時間以上の日を快晴の日と定めた。
また、日照時間のデータは横浜地方気象台のものを使用した。

図6 2010年 紫外線の月平均量   


雲がある場合は、雲がない場合に比べて全ての平均値が20%程度減少した。
各グラフを見ると、雲の影響がある時には8月に、雲の影響が無いときは7月にピークを持つことがわかる。
本来は太陽と地球が最も接近する夏至(2010年は6月21日)に最大となるが、日本では夏至が梅雨の時期と重なるため、その前後に最大となる。
このように、雲の存在は地上に到達する紫外線量に大きく影響していると言える。

2. 気温と紫外線の関係

使用したデータ   2009年・2010年・2011年  7月1日〜8月31日  5:00〜17:59の月平均値

本解析では7・8月を夏、5:00〜17:59を日射のある時間帯とし、その時間平均値を使用した。
2009年は冷夏、2010年は猛暑と呼ばれていた(図7)。
平均気温が高い年ほど日照時間も多いため、気温が高いほど紫外線量も多くなると仮説を立てた。

なお、気象値は気象庁のものを使用した。


図7 気温と紫外線の関係


紫外線・日射量ともに2009年が最も小さく2011年が最も大きい値となった。
本解析において、気温と紫外線量に関係は見られなかった。
なお0.5%以下の差は誤差として扱った。

3. MSデータとSORA-Oデータの比較

使用したデータ   2012年  1月1日〜11月30日  0:00〜23:59の時間平均値

本学ではMS-802とSORA-Oシステムの2種類で全天日射の観測を行っているが、その観測値の比較は行われていない。
2つの観測値を比較することで、データの信頼性を高めた。

図8 MSデータとSORA-Oデータ

図9 D値  



グラフの横軸にMSデータ・縦軸にSORA-Oデータをとると、相関係数は0.95となり2つはほぼ同じ値を観測していることがわかった(図8)。
また、MS-802の観測値からSORA-Oシステムの観測値を引いた値を”D値”とした(図9)。
計器の波長領域の違いにより、朝方や夕方では観測値に誤差が生じやすい事がわかった。


まとめ

雲の存在は日射や紫外線に大きく影響する




気温は紫外線量に影響を与えない





謝辞

多くの時間を割いてご指導いただきました、指導教官の筆保弘徳准教授をはじめ、横浜国立大学院環境情報学府間嶋研究室の楠稚枝様、気象学研究室の皆様に厚く御礼申し上げます。




背景に使用した素材はこちらからお借りしました。

Mariのいろえんぴつ