横浜国立大学と臨港パーク間ライン上における日変化の観測研究
〜FARO yokohama 2015〜


2016年 3月

気象研究室 森田隆之




- 研究背景と目的 -

筆保研究室でこれまでに行われた海風の研究より、横浜国立大学には「東京湾からの海風」と「相模湾からの海風」の2つの海風が時間差を持って吹くことが明 らかとなっていた。しかし、「なぜ夕方にかけて今まで吹いていた東京湾からの海風は相模湾からの海風に変わるのか?」という謎が残っていた...

以後、東京湾から流入する海風を「東京湾海風」、相模湾から流入する海風を「相模湾海風」と呼ぶこととする。

本研究ではなぜ夕方にかけて今まで吹いていた東京湾海風が相模湾海風に変わってしまうのかを観測により明らかにすること目的とした。






- 研究手法 -

観測範囲

「横浜国立大学」から東京湾に面する施設であるパシフィコ横浜「臨港パーク」まで結んだラインを観測範囲とした。

本研究ではこのライン上で上層観測、定点観測、移動観測の3つの観測を行った。

上層観測

パイロットバルーン観測による上層風の観測を行った。
6:30〜21:30まで1時間半おきに全11回観測を行った。




定点観測

観測ライン上の5地点で観測を行った。
横浜国立大学 :sora-o(気温・風向・風速)
ポイント@AB:おんどとり(気温)
臨港パーク  :コロスケ(気温)、AWS(風向・風速)




移動観測 

 

  GPS(現在地を記録)とおんどとり(気温・気圧・湿度を観測)を愛車エリザベスに取り付ける。
観測仕様に進化したオブザベスで、往復を2時間で、全7往復移動しながら観測をした。






- 観測結果 -

地上風

図は横軸に時間をとり、上側に横浜国立大学と下側に臨港パークの地上風をベクトルで表したものである。
この図は午前中に東京湾からの南東風の流入が見られた。これは東京湾海風だと考えられる。
そして、横浜国立大学では15時頃に、臨港パークではその約1時間遅れで南西風が入っている。これは相模湾海風だと考えられた。




上層風

この図は縦軸に高度、横軸に時間をとって風向・風速をベクトル、そのうち東西成分をシェードで表したものである。
この図からも南東風が先に入っていて、15時頃から南西風が入っていることが分かる。
さらに海風の厚さを見ると東京湾海風、相模湾海風、共に高さ250mの厚みを持っていることが分かった。




地上気温

左上図は縦軸に時間、横軸に観測したラインの経度を取り、観測で得られた地上気温を色で表しプロットとしたものである。
この図の空白部分を得られたデータによる補完で内装したものが右上図になる。
図を見てみると、海側と比較して初めは内陸の方が気温が高く、次第に気温に差が薄れ、夜にかけては内陸の方が気温が低くなっている様子が見られた。
そして、この気温が薄れた時間に着目してみるとおよそ15時頃であり、風向が変化した時間と一致していることがわかった。






- 考察 -

FARO観測では東京湾海風と相模湾海風の2つの海風が観測された。 観測結果から相模湾海風が横浜国立大学に到達したのはおよそ15時頃であるとわかる。 この東京湾海風が相模湾海風に代わる15時頃において、風ではなく地上気温に目を向けてみると、この時間を境に東京湾方向における海側と内陸の気温差が薄れていることがわかった。 東京湾海風は東京湾と内陸で気温差が薄れたことにより、衰えていったのだと考察した。 このとき相模湾方向の気温差についても気温差はどうなっていたのか観測を行っていないのでわからない。 そこで極軌道気象衛星データによる海面水温分布を調べた。

すると、横浜国立大学の気温が31.6℃なのに対し、東京湾の海面水温は約31℃で、相模湾の海面水温は約27℃と、相模湾方向の気温差がかなり大きく、東京湾海風が衰えた時間においても相模湾海風は吹き続けていることがわかった。 このことから「なぜ夕方にかけて東京湾海風が相模湾海風に変わるのか?」という謎は、東京湾と内陸の気温差が小さくなったことで東京湾海風が弱くなり、そこに相模湾海風が遅れて到達したからだとわかった。






- まとめ -

6 横浜国立大学には東京湾からの海風と相模湾からの海風の2つの海風が時間差を持って吹くが、相模湾からの海風が到達する頃には、東京湾と内陸の気温差が小さくなっており、東京湾からの海風が弱くなっていた。そのため相模湾からの海風が流入しやすくなった。




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