パイロットバルーンと雲画像PIV解析を用いた上層風観測
~雲風の新しい捕え方~
2018年 3月
気象学研究室 中村望
1) 研究背景・目的
中学校第二学年において、高気圧周りの風や海陸風の学習をするのだが、
教科書に上空の風も描かれていても、注目されるのは地上の風のみとなっている。
しかし、日々実感する天気の変化は地上よりも上空の風の方が影響しているのが事実である。
そのため、生徒にとって上空の風の理解が重要なのではないかと考えた。
これらの点を踏まえ、学校現場でも使える上層の風を捕えられる教材開発を目的とした。
2)手法
①観測プロジェクトR-HAWK2017の実施
②パイロットバルーン追跡による上層風の算出
図2-1 セオドライトによる追尾
①雲画像の撮影

図2-1 動画撮影
②PIVでの定量的な雲の移動の検出
図2—2 PIV結果
③雲風の算出
3) 結果
観測は2016年11月29日から2017年9月14日の全19回行った。
しかし動画撮影が上手く行えていなかった4回分を除いた15回分で検証していく。
以下の図3-1に観測日時とその日の雲量と雲の種類を記す。
図3-1 観測日時とその日の雲量と雲の種類
ここで、2016年12月7日の結果を見ていく。
まず、得られた画像をPIVにかけ、標準偏差÷平均をしたものをばらつきと定義した。
その評価基準は、0<ばらつき<50%を○、50<ばらつき<100%を△、100%<ばらつきを✖とした。
この日のばらつきは図3-2のように19.8%であったため、評価は○となる。
図3-2 2016年12月7日のPIV結果とばらつき
風向についても観点を設けた。
0<風向<45°を○、45<風向<90°を△、90°<風向を×とした。
図3-3 2016年12月7日の風向の結果
風速は0<風速<1.0m/sを○、1.0<風速<2.0m/sを△、2.0m/s<風速を×とした。
図3-4 2016年12月7日の風速の結果
このように、全ての観測事例に対して同様に検証を進めると、それぞれ以下の結果になった。
評価は左から順にばらつき、風向、風速を示す。
図3-5 全事例の結果
4) 考察
これらの結果が、雲量と雲の種類に依存していると考えた。
こちらが雲量とばらつきの関係を示したものである。
雲量が4~7のとき、ばらつきが50%を下回ることが多いことがわかる。
図4-1 雲量とばらつきの関係
また、雲の種類とばらつきについても注目してみた。
観測回数の多かった、積雲、乱層雲、巻層雲では、積雲が観測された場合、
ばらつきが100%未満が多い。
図4-2 雲の種類とばらつきの関係
5) まとめ
積雲で、雲量が4~7のとき、雲風は良い結果を得られることがわかった。
今後は実際に学校現場で観測を行った際、生徒がどれほど興味を抱くか検証したい。
2018/03/21 中村