湘南海岸における海陸風の観測研究
〜DIVA湘南2018〜


2019年 3月

気象学研究室 赤木 由布子







1) 研究背景・目的

  筆保研究室ではこれまで横浜国立大学における日変化の研究、特に海風を代々研究してきた。その中で、横浜国立大学第2研究棟や東京湾沿いでの観測は行われてきたが、相模湾  での観測は行われてこなかった。
  本研究では相模湾海風・陸風を観測することと、相模湾海風の特徴として、海風の吹きやすい時期と風向の変化があるのかについて調べることを目的とした。

  そのために筆保研究室TEAM SORAとダイビング会社兼気象予報会社である湘南DIVEさん共同で、日変化という意味のDiurnal Variation 湘南2018、略して「DIVA 湘南 2018」を始動した。  

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図1  DIVA湘南2018


2)観測手法
  @AWSの風向・風測器を葉山(湘南DIVEの事務所2階屋根)に設置し、風向・風速を観測する
  A本研究が求めている日変化を伴う海風・陸風を抽出する
条件:天気が晴れである(横浜地方気象台で快晴または晴れ)
     陸がしっかり温められた日である(日較差7℃以上、日照時間8時間以上)
     低気圧など周りの影響がないこと(気象庁の天気図で確認)

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図2-1 AWSの風向・風測器

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図2-2 観測場所(湘南DIVEの事務所2階屋根)

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図2-3 日変化を伴う海風・陸風
3) 結果

  観測は2017年3月23日から2018年10月3日の195日間行った。


以下の図3-1に観測地点における全観測期間の風配図を記す。

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図3-1 風配図


ここで、海風の吹いた日を見ていく。

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図3-2 海風の吹いた日
続いて、海風が吹いた日の夜間に陸風が吹いた日を示す。


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図3-3 陸風が吹いた日



ある日の海風の例。


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図3-4 2018年4月21日の風向・風速の結果






4) 考察

@海風が4月5月によく吹くこと(観測期間内において)
A海風が午前は西風、午後は南風に変わること


@海風が4月5月によく吹くこと こちらが4月から9月にかけての気温と海面温度の様子である。縦軸には、一日1時間ごとの気温と海面温度をプロットしている。
気温と海面温度の日較差を表している。


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図4-1 気温と海面温度の季節変化


気温と海面温度の差が大きいのは4月5月であり、海風の吹く条件が整いやすくなる。
そのため、海風は4月5月によく吹くと考えられる。



A海風が午前は西風、午後は南風に変わること
陸の気温が暖まり始めた午前中は、海と陸の温度はそれほど大きくない。そのため、狭い範囲で弱い海風、つまり局地的海風が吹く。局地的海風は規模が小さいため、海岸線で垂直、つまり観測地点では西風が吹く。


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図4-2 午前に局地海風が吹く様子


一方、暖まってきた午後では、 広い範囲で海と陸の温度差が大きくなり、広域海風と呼ばれる大規模な海風が吹く。 そのため大規模な海風は南風で、観測地点でも南風が吹く。

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図4-3 午後に広域海風が吹く様子


つまり観測地点では午前に西風、午後に南風に変化すると考えられる。
5) まとめ
海風は、冬を除く期間だけでの観測になるが、4月5月に頻度が高い。
観測地点では、陸風はあまり観測されなかった。

海風の風向は午前に西風、午後に南風に変わる傾向があり、それは局地海風と広域海風という海風をとらえていると考えた。


今後はDIVA湘南2019に引き継ぎ、 葉山での観測を続ける。 そして、パイロットバルーン観測を行い、地上風だけでなく上層の海風も観測していきたい。

謝辞
今回、研究に協力いただいた株式会社湘南DIVE.com様、ありがとうございました。





2019/03/21 赤木