パイロットバルーン観測による芝崎海岸における海風構造の解明〜DIVA湘南2019〜
2019年3月
筆保研究室 細川茜
1)研究背景・目的
海風について、筆保研究室では、赤木2018により芝崎海岸の地上風観測による研究を行い、
その結果、赤木2018の独自の定義により、以下の2点を解明した。
@観測期間195日で、海風を40日間観測した
A海風は4月と5月に吹きやすい
しかし、地上風のみの観測のため、海風の層厚、海風の反流を明らかにできていない。
そこで、本研究では、「芝崎海岸に吹く海風について、その層厚、反流の有無を明らかにする」ことを目的とし、
パイロットバルーンを用いた観測、AWSを用いた観測、またひまわり8号のSSTデータを用いた解析を行った。
そして、本研究は、赤木(2018)での観測プロジェクト『DIVA湘南2018』を引き継ぎ、『DIVA湘南2019』と題して行った。
2)研究手法
2.1)パイロットバルーン観測
パイロットバルーン観測は、芝崎海岸付近で行った。
芝崎海岸からバルーンの放球を行い、放球場所から北北東の方角に位置する森戸神社の駐車場からバルーンの追跡を行った。
図1は、観測時の各地点をのせた。2地点間は398mであった。
図1 パイロットバルーン観測の観測地点
また、観測は4月5月の天候が穏やかな日として、2019年4月23日と2019年5月17日の2日間で計22回の観測を行った(表1参照)。
パイロットバルーン観測は基本的に2時間インターバルで1日7ショット行ったが、天候や、地上における風向の変化が著しいと
感じた場合などは、観測の追加を行った。
表1 観測日程
2.2)AWS観測
AWS観測は、赤木2018での観測を継続して行った。
観測は、芝崎海岸付近に位置する湘南DIVE葉山ポンプ店をお借りした(図2)。
観測器を湘南DIVE葉山ポンプ店のある建物の一階廊下の奥、風速器を建物の屋根に取り付けた(図3)。
図2 湘南DIVE葉山ポンプ店の外観
図3 AWSの設置(左:風速器 右:AWS)
観測期間は、2018年10月1日〜2019年9月30日までの365日間であり、データ回収率は92.3%であった。
3)結果と考察
本観測により、2日間のパイロットバルーン観測で海風を観測することができた。
4月観測、5月観測の観測結果を以下の図4に示す。
図4(左)2019年4月23日観測結果 (右)2019年5月17日観測結果
上段:東西風(m/s)(西風が正)
下段:南北風(m/s)(南風が正)
(いずれも縦軸は高度(m)、横軸は時間(日本時間))
図4は、横軸が時刻、縦軸が高度であり、矢羽で各時刻・各高度の風向を表している。また、シェードにより、上段では
西風・東風を、下段では南風・北風を示している。また、色のついていない部分は、観測していないまたはバルーンのロスト
により観測できていない部分である。芝崎海岸では、西風・南風が海風であるため、図中の赤色の部分で海風が吹くと読み取れる。
詳しく見ると、4月23日は、海風が10時から南東風として吹きはじめ、12時以降は南西風として吹いた。
5月17日は、12時から海風が南西風として吹き始め、南風・南東風と風向が変化しながら吹くと見て取れる。
また、海風の上層に北東風の層があります。海風の風向と比較し、反流であると考えられる。
次に、層厚を図5からみる。
図4(左)2019年4月23日観測結果 (右)2019年5月17日観測結果
図5 風の南北成分の鉛直分布
図5は、縦軸が高度、横軸が観測時刻を表しており、各観測時刻の風の南北成分の鉛直分布を示している。この図から、
南風成分を含む海風は赤い部分で吹き、その層厚は、4月は16時で最大1400m、5月は16時で最大800mであった。また、反流は、
図中の青い部分であり、その層厚は5月が推定1000mであった。
4)まとめ
本研究では、芝崎海岸に吹く海風について、
@その層厚は、4月が最大1400m、5月が800mであった。
A反流が存在する。
ことが解明できた。
しかし、反流について、実際に海風の循環による風であるか疑問が残っている。回数・観測場所を増やした観測により、
正確に海風を捉えることができると思う。
2019/3/3 細川