1)研究背景と目的
小学校で学ぶ気象分野は、太陽や天気の変化など時間・空間スケールが幅広い。 同時に、学習指導要領では、実際に観察する機会を多く設けるよう求められている。 しかし、それらの観察には、天候や時間帯に左右されやすく、継続的な観察が必要になるという課題があり、 授業内で実際に観察することは難しい。 そこで、観察の代わりになる教材として、天文分野では「プラネタリウム」が用いられていることに着目をした。 そして、気象の学習においてもプラネタリウムを活用できないかと考え、 ① 魚眼レンズカメラで実際の空を継続的に撮影する。 ② プラネタリウムで投影する新しい気象教材の開発と検討をする。 の2つを目的とした。
2)研究手法
2.1)空を定常的にカメラで撮影する。 撮影には、広角で撮影ができる魚眼レンズカメラ(CASIOのEXILIM EX-FR200)を用いた。 撮影した画像は、カメラが上を見上げた形になり、地図とは異なり右側に西、左側に東が写る。図1 魚眼レンズカメラと撮影した画像 撮影は計160日間、場所は4月~8月は川崎市、9月から現在までは横浜国立大学第二研究棟で撮影をした。 画像の撮影する間隔は30秒と設定し、タイムラプスでの撮影をした。 2.2)撮影した画像をつなぎ合わせて動画にする。 撮影した画像をつなぎ合わせて動画にする → 動画編集ソフト(Video Studio) 気象現象の解説のスライドを作成する → Power Point を用いて編集した。
図2 作成したスライドの様子 プラネタリウム用に上下に反転させた図を入れ、文字は円の縁に沿うように編集をした。 それらをつなぎ合わせ、動画を作成する。 2.3)プラネタリウムを用いた気象教材を作成する。 使用させていただいたのは、川崎市多摩区にあるかわさき宙と緑の科学館のプラネタリウム。 科学館の方のご協力のもと、4回もの試写会を行い、検証をした。 作成した教材は以下の4つである。 1.虹のしくみ「キミも虹マスター」 2.月と太陽の軌道「月の時間」 3.ビーナスベルトと地球影「夕焼け裏のビーナス」 4.空のアラカルト「いろいろな空模様」 1.虹のしくみ「キミも虹マスター」
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2.月と太陽の軌道「月の時間」
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3.ビーナスベルトと地球影「夕焼け裏のビーナス」
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4.空のアラカルト「いろいろな空模様」
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3)結果と考察
4回の検証を通して、 文字や図の大きさをプラネタリウムに合わせることができた。 小学生向けの教材として、再生速度をもう少し落とすことが課題であった。 動画にナレーション音声を入れることで教育的効果を高めることができると考えた。 プラネタリウムを利用した気象教材のメリットとデメリットは以下の点だと考える。そして、科学館の方からは 「プラネタリウムの没入感を生かした理科の新しい教材には見込みがあるということ」 「天文分野を扱うプラネタリウムにとって、新たな利用方法として利用促進ができる」というお言葉をいただいた。
4)まとめ
①魚眼レンズカメラを用いた継続的な空の撮影 定常的に撮影する方法を考え、様々な気象現象を捉えることができた。 ②プラネタリウムに投影する新しい気象教材の開発と検討 撮影した写真をもとに気象教材を作成し、プラネタリウムで実際に投影ができた。 そして検証を重ねた結果、理科教材としての可能性を見出した。 今後の展望と課題 今回撮影できなかった冬~春、台風の時期の撮影を続ける。 ナレーションによる解説を加えたりプラネタリウムの映像と融合したりと修正を加える。 実際に小学生に向けた授業実践を行っていきたい。
謝辞
今回の研究にご協力いただいた川崎市青少年科学館の皆様、タマヤ計測システム株式会社の皆様、 筆保研究室のメンバーに心より感謝申し上げます。2020/2/28 小田部 HPに使用した壁紙はこちらの素材サイトからお借りしました。
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Mariのいろえんぴつ