台風経路アンサンブルシミュレーション

〇台風経路アンサンブルシミュレーション
人為的に操作した数値シミュレーションにより、特定の台風をモデルにして、実際の経路とは異なるシミュレーションを行う手法。
山崎聖太卒論から抜粋しております。詳細は山崎聖太卒論を確認してください。



1.台風経路アンサンブルシミュレーションの概要
①本実験(CTLラン)として、図1中央と図2中央のように、計算ドメインを(例では伊勢湾台風モデルで、CTLは中心経度を東経140°にとる) としてシミュレーションを行う。
②図3のように大気の場を東西に水平移動させた設定で行う。計算領域は、図1と図2のようにドメイン中心経度も同様に動かす。
例の伊勢湾台風モデルでは、気象場をCTLより西や東に8.0°で水平移動(シフト)した初期値を使って計算を行う。計算領域の中心経度も同様にCTLよりも西に 8.0°シフト(例では中心経度を東経132°と東経148°)して計算を行う。
③通常のアンサンブルシミュレーションでは、研究対象や台風モデルに合わせて、 台風を東西方向や南北方向に~50°の範囲において0.2°(約20km)間隔でシフトさせて 50~150のアンサンブルシミュレーションを行う。
④結果を比較する。図4のように、伊勢湾台風モデルの台風経路アンサンブルシミュレーション結果では、それぞれの台風初期位置(左)位置から 計算した台風のトラック(右)はCTLに対して平行に動く。図5のように、雲構造を比較すると大きく差はない。 図6には、Domain2における台風の中心位置と中心気圧および最大風速の時系列である。海面温度の高い南東で台風の強度が強くなっている。上陸付近では強度が同程度になっている。
図1:CTLラン(中央)と東西に8°台風を水平移動した実験例(赤 いマークは水平移動していない台風の初期位置)

図2: CTLラン(中央)と東西に8°台風を水平移動した実験の各計算領域。外枠がDomain1、内枠が Domain2の計算領域であり、Domain1が18km、Domain2が6kmである。

図3:初期値境界値のシフトの概念
図4:ずらした台風の初期の中心位置(左)と各初期位置位置から計算された台風のトラック(右)。実験結果は間引いている。
図5:同時刻におけるCTLラン(中央)と東西に8°シフトした台風の衛星雲画像。

図6:左はDomain2で計算された全メンバーの台風経路(赤:CTL 青:東 緑:西)。中央はDomain2における台風の中心気圧の時系列。 右はDomain2における最大風速の時系列。



作成者:筆保弘徳