私が筆保研究室のメンバーになったのは大学院1年生の途中からです。気象学を研究したいやお天気キャスターになりたい、という夢があった私ですが、研究室に配属される時は筆保先生が大学に来られる前だったこともあり、気象学ではない研究室に入りました。しかし、研究生活が辛くて耐えられなくなり、「大学を辞めて四国に帰ろう」と退学を決断しました。横浜を離れる準備をして、心を癒す目的で四国のお遍路さんを回る予定も立てました。そしてもう最後になると思い、筆保先生に別れの挨拶をしに伺いました。「お天気キャスターになる夢はどうしたの?」「それは・・」と口ごもる私を見て、「俺のところに来い!」。研究室を変えて大学を続けないかという筆保先生のお誘いに、「はい」と私がすぐに返事をすれば感動的でしたが、その時私は「休学届を出したので、もういいです。」とお断りしました。しかし、筆保先生は引き下がらず、「俺が休学届は破棄しておくから」「でも明日愛媛に帰る切符を」「俺がキャンセルしておくから」「でも明後日からお遍路さんに」「俺が代わりに回っとくから」。あまりに強引な引き留め方に私は久しぶりに大笑いをしていました。大粒の涙も隠さずに。次の日から、筆保先生の下でやり直すことにしました。筆保先生には高い目標をたくさん立てていただき、私はお遍路さんを回る暇もなく、結果を出すために新しい仲間と何度も徹夜をして研究をしました。大変でしたが、好きな気象に全てを捧げられることはなんと幸せなことかを知りました。おかげで、休学することなく卒業して、念願のお天気キャスターにまでなれました。今でもあの日を思い出します。あの時あのまま歩き遍路をしていたら違う人生を歩んでいたでしょうね。
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